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フィルムカメラ時代のレンズ、通称オールドレンズ。
ミラーレスカメラならマウントアダプター1つで気軽にオールドレンズを楽しめるということを知り、わたしも特に理由もなくオールドレンズの世界に一歩を踏み出しました。最初のレンズはHelios 44-2 58mm f2でした。
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『HELIOS-44-2』レビュー!ぐるぐるボケが楽しいロシアンレンズ
Contents1 HELIOS-44-2 58mm f2を買ってしまった!2 絞りの構造が分かりにくい!!プリセット絞りの使い方2.1 HELIOS-44-2 58mm f2はこんな構造です2.2 ...
オールドレンズの魅力はいろいろありますが、わたしの場合はレンズ自体のメカメカした造形と、写真を撮ってることを強く感じる楽しさ、そして独特な写りにすっかりやられてしまい、以来少しづつオールドレンズを買い足しています。
今回購入したのはロシアンレンズと呼ばれる旧ソ連製のレンズ、Industar 61 L/Z 50mm。Helios 44-2 58mm f2と同じロシアンレンズであり、Helios 44-2 58mm f2同様変わった写真が撮れることで有名なレンズです。
Industar 61 L/Z 50mmはこんなレンズ
旧ソ連製のオールドレンズで、もちろんマニュアルフォーカス。わたししのような素人では、動体撮影は至難の技。というか、無理!
絞りピンとか複雑な機構は付いていません。とってもシンプルな構造のレンズです。
外観に関しては、メカメカした造形が好きなわたしとしてはこのノッペリとしたシンプルな感じは少しイマイチ。材質はもちろん金属(アルミ?)なのでずっしりと重たいです。
如何にもロシアンチックなレンズキャップが付属しておりましたが、
このレンズキャップは金属製であることに加え、なんとレンズに被せる方式。お陰でレンズの周囲は塗装剥げだらけじゃないか!!
これ以上レンズに傷を増やさないよう、このレンズキャップは速攻で取り外し。可愛らしいフォントなだけに残念です。なんて書いてあるのか分かりませんが…
88年製造。文字もロシアンチックな文字なので、後期型と呼ばれるタイプですね。数字以外はやっぱりなんて書いてあるのか分かりませんが…
絞りは無段階方式でした。
カチカチっとしたクリック感は一切なく、ヌルーっとした抵抗を感じつつ絞りリングが回ります。
絞り解放でF値2.8、最大まで絞ってF値は16。間の4、5.6、8、11の数字が目安として絞りリングに刻印されています。
星ボケが有名なレンズです
このレンズの特徴は何と言っても星ボケと呼ばれる独特なボケ。
ん?星ボケって何だ?
星ボケっていうのは…
例えばピントが合っているとこんな感じに撮れる写真が、
ピントが外れると(ボケると)こんな感じになること!!※この2つの写真は全く同じ場所から撮影しています。
ボケが星の形になるので、星ボケと呼ぶのです。ちょーかわいいー!
Helios 44-2 58mm f2のグルグルボケもそうなんですが、わたしのような素人にはこういう分かりやすい特徴があるレンズが楽しくて良いです。細かい描写の違いなんかだと、積極的に購入する意欲が湧かないですよね。
ところでこの星ボケなんですが、
- ピントが合っていない
- F値が5.6~8程度
- 小さな光源がある
という条件で出現するようです。
なので、夜じゃなくてもこのような木漏れ日でも星状のボケが発生します(後ろの白いボケです)。
後ろのボケが、全部細かい星になってる!!さり気なく、でも星まみれで可愛いですね。
でもやっぱりこの星ボケが真価を発揮するのは夜のイルミネーション。
イルミネーションを背景にして、その前にいる人物を撮影するようなシーンだとこの星ボケが活きてきますね。とっても可愛い!!
このボケは絞り値がF5.6~8程度の時、絞りがこのように星型になることが原因です。どうしてこんな形にしたんでしょうね。
同じ名前のレンズでも、この絞りが星形にならないものもあるようなので購入の際は要注意です。
無限遠がでない!
さて、ヤフーオークションで相場より若干お安い9,000円程度で購入したこのIndustar 61 L/Z 50mmなんですが、いろいろ使ってみると無限遠が出ないという問題があることが分かりました。
無限遠が出ないっていうのは、ピントリングを∞(無限)にしても、遠距離のピントが合わないこと。
そういう問題はマウントアダプターの精度のバラツキで発生することが多いらしいけど、別のマウントアダプターで試しても同じ結果。
また、距離目盛りと実際にピントが合う距離もズレズレでした。0.3mの目盛りの時に、実際は0.5m辺りのピントが合う感じ。
被写界深度目盛りのセンターと絞りリングのセンター(赤丸)がズレてるし、
本来はレンズの上側にくる距離表示が側面にズレてる!
なんだかいろいろおかしいことが分かりましたので、恐らく無限遠が出ない原因はこのレンズ自体にあるんじゃないの?って気がしてきました。
Industar 61 L/Z 50mmを分解しよう
このままじゃなんだかすっきりしないので分解してみることにしました。
レンズの分解なんて初めてです。またオールドレンズに関する知識もさっぱり。だけど、分解すれば何か分かるかもしれない。
このマウント部分のネジが簡単に外れそうなので、まずはこのネジを精密マイナスドライバーで取り外し。
ネジがゆっるゆるだったので、なんだか不安が込み上げてきます。あれ、以前に誰か分解してる?
ネジ3本を外せば、マウントは簡単に外れました。
このマウントは本当にネジ3本で固定されているだけなので、このマウントの固定の向きは120度刻みで好きに取り付けできそう。レンズが横を向いている問題はこの部分で簡単に解決できそうです。
この時点で、このレンズは以前に私以外の素人が分解したんじゃね?って予想が確信に変わりつつあります。
ここのネジもゆっるゆる。
きっとこれを分解した誰かさんは、ちゃんとした工具を持っていなかったのでしょう。手で、締めたんじゃないでしょうか。
分解して内部構造を確認した結果、無限遠がでない原因はこの3つの部品の組付けが間違っていたことだと分かりました。多分だけど。
どういうことかというと、
このレンズは①マウント部、②レンズユニット、③④ヘリコイド部の大きく3つの部分から構成されています。むっちゃシンプル。
※③がヘリコイド、④がピントを調整するピントリングです。
図のように、レンズが一番縮んでいる状態が無限遠の位置。ピントリングの目盛りは∞になっています。
ピントリングを広角側にグリグリ回すと、ヘリコイドがせり出してレンズユニットをカメラから離れる方向に移動します。
図のように、レンズが一番長くなった状態が最も近くにピントが合う状態。ピントリングの目盛りはMになってます。
ところが、わたしが購入したIndustar 61 L/Z 50mmはピントリングの目盛りが∞になっているにもかかわらず、ヘリコイドが少しせり出している状態だったのです。
その証拠に、レンズを一番縮めている状態にも関わらず、絞りリングはピントリングから3mm程度離れていました。
後々正しいと思われる組み立てをした後では、ここの距離は1.5~2mm程度になったので、1~1.5mm程本来の位置からレンズユニットが飛び出していたのです。
正しい組み立て方法なんですが、組み立てはなかなか文章で説明するのが難しいのですが…
まずはピントリングとマウント部を組み立てて、ピントリングの目盛りが∞になる状態にしておきます。
その状態で、このように内部のヘリコイドがツライチになるように組み立てれば、多分オッケー。
このような見た目になる組み立て方法は1つしかないので、いろいろ試せばそのうちこんな状態になるはず。
組み立てにはカニメレンチと呼ばれる工具を使ってきっちり、しっかり組み立てます。
カニメレンチはせいぜい1,000円程度のものです。それで気持ちよくレンズが組み立てられるなら安いものではないでしょうか。
きっちりネジを締めて、マウントの位置を変更したらきっちりと向きが整いました。
被写界深度メモリも上方向になったし、絞りの基準点も同じく上方向にピシッと揃いました。やっぱりピシッとしているのは気持ちが良い!
無限遠もばっちり出るようになりました。やった!
オールドレンズはやっぱり楽しいな
というわけで、今回は初めてオールドレンズの分解に挑戦してみました。
せっかく購入したレンズなのに無限遠が出ないという問題が発覚したのがとても悔しく、なんとかしたくて勢いだけで分解しました。予備知識も経験も全くありません。
それでもこうやって問題を特定して元に戻せたのは、このレンズの構造のシンプルさによるもの。
道具も1,000円程度で購入できるカニメレンチと、マイナスドライバーだけです。
面白い写真が撮影出来ることも大きな特徴ですが、こうやって自分で修理をしたり、メンテナンスを出来るのもオールドレンズの楽しみの一つかもしれません。今回の作業でこの新入りのIndustar 61 L/Z 50mmに対する愛着がぐっと湧いた気がします。
便利さや写りの美しさは現代のレンズが優れますが、味や楽しさは間違いなくこれら昔のレンズの方が優れているとわたしは感じています。