DIYをやっておりますと、たまに舞い込むのが知り合いからの製作依頼。
知人からの製作依頼ってドキドキしますよね。
自分のものなら多少の不具合があっても目を瞑ればお終いですが、他人のものならそうはいきません。失望させてはいけない!というプレッシャーも感じますしね。
ですので普段は知人からの製作依頼を受けることはあまりないのですが、今回はいつもたくさんのお野菜や果物を頂いている方からのご依頼。なので、日頃のご恩に報いるべく、一生懸命作業させて頂きました!
今回の作業
どんな作業? : ラブリコとダボレールを使った壁面収納の製作
使うもの : ラブリコ、ダボレール、2×4材、ワンバイ材、その他いろんな道具
必要な費用 : 2万円くらい
肉体行使度 : ★★★☆☆(3)作業日数は2~3日
言いたいこと : 使い勝手が良くて設置場所にぴったりな棚を入手するには、DIYでの製作が一番の近道。ダボレールを埋め込むと完成度が断然アップ!
製作するのは壁面収納
今回製作の依頼を頂いたのは壁面収納です。
ご依頼者は家の裏に畑をお持ちで、畑に繋がる裏口に靴や長靴、収穫グッズを置く為の壁面収納が欲しいそうです。
”棚”といえばDIYの代表的な製作物ですよね。
もちろんその構造のシンプルさからDIY初心者でも手軽に挑戦できることが大きな理由だとは思うのですが、わたしは棚に関してはDIYで製作したものの方が既製品よりも使い勝手が良いと考えています。
例えば、椅子や机であれば使いやすい寸法がある程度決まっていますので、既製品から選んでもきっと満足出来るものが見つかるはず。しかしながら、棚は用途によって使いやすい寸法なんて全然違うし、それに加えて自分が考えている設置場所にぴったり収まる大きさのものを既製品から見つけることは極めて困難でしょう。
ですので、使い勝手が良く、かつ設置場所に無駄なくぴったり収まるような”理想の棚”を得るには、DIYで製作するかオーダーメイドで製作してもらうしかありません。
今回はせっかく製作のご依頼を頂いたので、頂いた要望すべてにしっかりお応えできるように製作しましょう。
要望点
- 壁全体に棚が欲しい
- かといって圧迫感があるのも困るから、奥行きは300~350mm程度
- 棚は可動式
- 床にはゴルフバックを置きたい(高さ1,300mm程度)
- 見た目は大事 ←これはプレッシャーだ…
材料
なにはともあれ、まずは材料調達から。
メインの材料として選んだのは2×4のウェスタンレッドシダー。
わたしはウェスタンレッドシダーの色と香りと節が大好きなので、家具製作ではよく使用します。
今回の製作でも打ち合わせの結果、この木材で即決でした。
ウェスタンレッドシダーって木目の表情が豊かで綺麗ですよね。柔らかくて傷が付きやすいというデメリットはありますが、屋内の場合ウッドデッキと違って腐敗の心配をする必要がありません。
今回は3,040mmの長さのものを調達しましたので、自家用車にそうそう積載できる寸法ではありません。ですのでこれまでのウッドデッキ材と同様、ネットショッピングで購入致しました。ホームセンターでも購入することは可能ですので、その場合はホームセンターのトラックレンタルサービスを利用すると良いですね。
そして、今回初挑戦するのがこちらのLABRICO 2×4アジャスター。
”ラブリコ”って呼ばれていることも多い製品で、2×4材に取り付けて使用する突っ張り棒みたいなもの。
手軽なDIY材料としてあまりに有名なものですから、以前から一度使ってみたかったんですよね。今回はこれを転倒防止機構として使用します。
アジャスターという名前の通り、ネジにより全長を調整出来るようになっています。
ネジ部にはバネによる張力も効いていますから、一般的な突っ張り棒のようにネジの力だけではなく、バネの力で優しく突っ張ることが出来ます。家屋の天井って思っている以上に脆いので、優しく突っ張れるのっていいですよね。
その他、棚板に使用するSPF材、可動式の棚受けを作る為のダボレールなどの材料はストック品(以前の製作の余りもの)を活用します。
設計図作り
ウッドデッキ製作でも家具製作でもそうなんですが、何かを作る時は必ず設計図を書きましょう。
各部の寸法を暗記することなんて出来っこないし、もしかしたら計算ミスをしているかもしれません。作業直前に確認出来るようにする為にも、必ず図面は必要です。落書きレベルでも良いですから。
実際わたしのは完全に落書きレベル。
屋外の作業場所で、Amazonの紙袋の裏側に書いているくらいなんですから。
設計図作りに費やす時間はわずか10分程度ですが、それでも効果は絶大です。
設計図作りの時にラブリコの寸法を測定しようとしたら、なんとしっかりと説明書に寸法が記載されているじゃないですか。
こういう親切な姿勢って良いですよね。なんだか一気にラブリコが好きになっちゃいました。いいじゃん、ラブリコ!
棚柱の製作
木材の加工
設計図が出来たら、早速それに従って木材の加工を開始。まずは棚柱から作っていきましょう。
最初に行うのは卓上丸ノコによる部材の切り出し。
棚は単純な直角カットだけだから、卓上丸ノコだと僅か数分で終わります。切断面もとっても綺麗!
次に組み立てネジを取り付ける為のザグリ(座ぐり)加工を行います。使用するのは直径10mmのザグリドリル。
これを行わなくて当然木ネジ(コーススレッド)を取り付けることは可能なんだけど、わたしは絶対にこれをやった方が良いと考えています。
どうしてかというと、
ツーバイフォーの長手方向(4インチ側)からそのまま木ネジを打つ場合、絶対に89mm以上の木ネジが必要となります。そうしないと木ネジが貫通しないから。
もちろん89mm以上の長い木ネジを使えば組み立てることは可能だけど、そうすると木ネジの全長の内89mm分は全く接合に使われないことになります。それはあまりに無駄すぎるし、そもそもそれだけ長い木ネジになると締め付けるのに非常に力が必要で、締め付けの途中でねじ切れてしまうこともあるんですよね。
そんなリスクを避け、無駄も省く為、図のように木ネジを木材の奥深くに取り付けるようにするのがザグリ加工の目的です。これならより短い木ネジで済むでしょ?
木ネジを取り付ける部分のザグリ加工が終わったら、お次はダボレールの取り付け。
ダボレールはこのように木材にそのままネジ留めするだけで取り付けることが出来るんだけど、やっぱりダボレールが盛り上がっているのはあまり見た目がよろしくありません。
化粧板などどうしてもこのような取り付けしかできない場所なら仕方がないけど、今回のような無垢材の場合はしっかりと埋め込み加工をしてやりましょう。
使用するのはトリマー。
加工音の大きさと、削りクズの飛散が激しいことからわたしが最も使用したくない電動工具、不動のNo1。
ご近所様、ごめんなさーいという気持ちと共に加工を行い、無事綺麗に溝が掘れました。
トリマーは極力使いたくないけど、でも、こいつじゃないと出来ない加工があるんですよね~。
ダボレールを使った可動式の棚の製作方法は、こちらの投稿で詳しくご紹介しています。
組み立て
木材の加工が終わったら各パーツを組み立てましょう。
ダボレールは決まった長さで販売されているので、トリマーで掘った溝の長さに合わせてカットします。
カットは切断砥石を取り付けたディスクグラインダーで行います。金属用ノコギリを使った手作業でも切れなくはないけど、ステンレス製なので結構大変。
切断面はそのままではギザギザで見た目が悪いし、なにより危険。240番くらいのペーパーディスクで綺麗に研磨しておきましょう。
そしてダボレールを棚柱に取り付け。
このピッタリ収まる瞬間は堪りませんね。やはりダボレールが埋め込まれると、一気にDIY感が少なくなって良い感じ。
今回製作する壁面収納は奥行350mmとなるのですが、2×4材をそれぞれ4隅に配置する形状となります。
この時点では設置後に前後の位置関係になる2×4材をそれぞれ結合させておきます。出来上がった両側の棚柱の接合は、棚板が出来てから行います。
今回初使用となるラブリコはあまり目立たせたくないので、設置後に奥側となる柱にだけ取り付けます。木材なんて寸法もバラツキも大きいだろうに、きつすぎず、緩すぎず、スーッと2×4材が入っていく感じがとても絶妙でした。いいじゃん、ラブリコ!
棚板の製作
今回作っているのは棚なのですから、棚柱だけでは使えません。当然、棚板も必要となります。それも、たくさん。なので次は棚板を作りましょう。
材料はSPFのワンバイ材。
依頼者に使用用途を伺うと”重量のあるものは一切乗せない”ということだったので、圧迫感を軽減する為にもワンバイ材をチョイス。重たい物を乗せる時はツーバイ材を使用します。ワンバイ材とツーバイ材とで作業負担は変わらないけど、材料のお値段は結構違います。
奥行350mmというのは、だいたい1×6材と1×8材を接合したような寸法。
ということは、1×14材を買ってきてカットしたら超簡単に棚板を作れるはずなんですが、残念ながら1×14材なんてものはそうそう無いみたい。もしあったとしても、かなり高価なはず。
なので、今回は家に余っているワンバイ材を適当に接合して棚板を作ることにしましょう。
板を接合する場合、木工ダボを使った接合がDIYでは一般的だと思うのですが、わたしはこれが結構苦手。これって難しくないですか?
例えば、丁寧にダボ穴を開けたつもりでも位置がずれていたり、斜めになってしまっていたり。その場合、当然板を綺麗に繋ぐことが出来ません(このお写真は今回とは全く関係のない時のものです)。
そして、そのまま無理矢理作業を進めたばかりにダボが全部折れちゃったり。こういうことが起こると、本当にウキーッて気持ちになっちゃいます(このお写真も、今回とは全く関係のない時のものです)。
なのでわたしはこのダボでの板の接合がどうも苦手。
そんな下手くそを少しでもカバーできるよう、わたしはこのように接合を行っています。
接合する板がきっちり水平になるよう、上下から別の板でしっかり押し付けつつ、接合は長いF型クランプで少しづつ均等に行うのです。
これなら多少ダボ穴がズレていても、ダボが折れるような方向に力が掛からないので失敗するリスクはとても低いです。もちろん、元々の板の歪みの矯正にも効果的。
ダボ穴をドリルで掘る時は目的とする深さが分かるよう、ドリル刃にマスキングテープで印付けするとよい感じですよ。専用のドリル刃を使えばこのような小細工も不要ですので、ダボでの接合を多用する方は専用の刃を準備しても良いですね。
そんなこんなで無事棚板が出来ました。
家に余っていた木材を無駄なく消化できるよう、1×6材と1×4材(3枚)の計4枚を接合した継ぎ接ぎたくさん仕様。
確かに余っている材料は消化できたし、それにより費用は削減できたけど、時間もかかるし正直あまりしたくない作業です…。
組み立て・完成
最後に、出来上がった棚板を使用して両側の棚柱を連結させます。
他の棚板は当然可動式なんだけど、一番下の段になるこの棚板だけは固定式。固定式の棚板は地面から1,300mmの高さにあるから、ちゃんと要望通りゴルフバッグも収まるはず。
写真には写っていないけど、この棚板以外に2本の2×4材が両側の棚柱の連結に使用されております。組み立ての強度に不安もあったけど、固定式の棚板を含む3つの木材による固定で結構がっちりしていて安心。
棚柱にダボレールを取り付ける為にトリマーで溝を掘ると、どうしても溝の端っこはこのように綺麗な直角にはなりません。回転する丸い刃で掘りますからね。
なのでいつもは綺麗にする為にノミなんかでチマチマ整形する必要があるんですが、
今回はその場所に固定式の棚板を取り付けることで綺麗に隠しました。
早速依頼者のお家に持ち込んで設置。
実は設置場所に対してあまりにぴったり作り過ぎた為に、搬入・設置が出来ないという笑えないトラブルもありましたが、現地で再度分解・組み立てを行うことでなんとか解決。あ~、良かった…。
ラブリコでのDIY例をいろいろと調べていると、転倒しちゃったという事例をいくつか見つけることが出来ます。
ラブリコは天井への突っ張り力により柱を設置出来ますが、住宅の天井はそれほど頑丈ではないので強い力でガチガチに突っ張らせることが出来ません。だから、それ単体だとどうしても転倒の危険があります。
もちろん耐荷重等を守っていればそうそう転倒はしないのでしょうが、今回はより安全性を高める為に構造的な工夫を行いました。
それは、あくまでもしっかりと自立する棚を製作し、そのサポートとしてラブリコを使用するような構造にすること。だから柱はちゃんと4隅に配置したし、各棚柱もしっかりと連結させました。
この効果は予想以上に大きく、設置の際、少しでも棚が傾こうものならラブリコがしっかりと突っ張ってくれて、むしろ設置に苦労したくらい。棚柱の2×4材をもう少し短くしておいた方が自由度が高かったかも…。でも、これなら地震がきても絶対大丈夫。
ご依頼者様にも満足頂けましたので、後は足りない棚板をせっせと量産するだけ!
随分お待たせしましたが、これでやっと肩の荷が下りた感じです。
今回初めてラブリコを使ってみましたが、DIYの素材としては噂通り便利で良いですね。今度我が家でもラブリコを使った家具を作ってみたいと思います。