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わたし、レイズドベッド好きなんです。
レイズドベッドというのは家庭菜園や花壇を地面にそのまま作るのではなく、木枠など使って地面より少し高くなるようにしたもの。

兵庫県の『神崎農村公園ヨーデルの森』にあったレイズドベッド

こちらもヨーデルの森にあったレイズドベッド。枕木製。
排水性とか通気性、そしてお世話時の作業性の向上が主なメリット。わたし的には普通の畑とは明らかに違う素敵な雰囲気も大きなメリットだなぁと思っています。
しかしながら、花壇や菜園スペースを木枠などで作ると聞くと、真っ先に心配になるのが木材の腐敗。
木材の選定次第ではそれなりの年月耐えるとは思うけど、わたしの結論はほぼ間違いなく腐るです。とくに、よく見かける杉などの針葉樹系はマッハで朽ち果てます。
水分があれば木材は朽ち果てるのが自然の摂理
もう、あたりまえのことなんだけど、木材は永遠に朽ち果てない材料ではありません。腐朽といって、腐朽菌による加水分解により文字通りいずれは消え去ってしまうものなのです。
木材の種類や周囲の環境などによって朽ち果てるスピードに違いこそあれ、これはもう自然の摂理。我々人類が抗うことはできないのだ!
腐朽菌による木材の分解は水分と密接な関係があるので、基本的には水分が多い環境や、日陰のような乾燥しにくい環境ほど進みやすいのが一般的。
こちらは鉄橋の線路の枕木。めっちゃ通気性が良い場所であるにも関わらず、見事な腐りっぷり。条件が良い場所であっても杉のような耐久性の低い木材であれば腐食しちゃいがち。よく見ると木材の木口周辺が派手に傷んでいますが、これはやはり水分を吸いやすい場所だからでしょう。

『クラブハリエ 守山玻璃絵館』にあった枕木のレイズドベッド。
ではレイズドベッドのような花壇や菜園といった場所はというと?そう、そういった場所は植物の生育のために積極的に水を撒いているので木材にとっては最悪レベルの環境なのです。とくに、土が木材と接する場合は。
レイズドベッドや家庭菜園と似たような環境なのが、お庭への枕木の埋め込み。枕木を地面に設置するのはとても素敵なんだけど、腐朽とシロアリのリスクに関する論争が度々起こりますよね。こんなのはメンテナンスがないがしろになりがちな自宅の庭で絶対にすることじゃない!って。
わたしもいろんな場所で枕木のお庭を見てきたけど、やっぱり腐朽は避けられないみたい。少なくとも国産の杉系枕木の耐久性はお察しですね。海外産のハードウッド製枕木だと地面に直置きしてもかなりもちそうだけど、どのくらい違うんでしょうね?ただし、海外産のハードウッド製枕木はお値段も重量もかなりヘビィなので、ほいほい試してみるようなお手軽材料ではありません。
例①:木材が地面と接するとどうなるのか実験してみた
実験対象は身近な材料である杉
レイズドベッドの作例を見ていると、材料で一番見かけるのは国産の杉。杉、お安いし入手しやすいですからねー。
しかしながら杉はかなり密度が低い木材なので、耐久性もかなり低め。そんな杉でレイズドベッドを作ったらいったいどの程度保つのか、実際にテストしてみました。2年間。
実験に使用したのはこちらの杉。ホームセンターで買ってきました。確か1本300円くらい。
杉といえば日本人にとって最も身近な木材。そこらの山にも山盛り生えてますし、和風建築では骨格・内装・外壁とありとあらゆる場所に使用されています。
そんな身近な木材である杉を使って実験するわけですが、実験とはいえ実際にお庭の材料として使用するのですから少しでも長持ちして欲しいもの。その為、一応の防腐処理として表面に塗装を施しています。塗膜を作るタイプの水性塗料で、所謂”水性ペンキ”って呼ばれるタイプのもの。確かホームセンターで数百円で購入した塗料だったと思います。
塗膜を作るタイプの塗料は塗膜が剥がれたら防腐機能は損なわれるし、定期的な塗り直しも必須。何よりも木目などがほぼ消えるので木材ならではの質感が損なわれるというデメリットがあります。その代わり、コストは安め。
この塗料のコストの安さに魅力を感じたので試しに使ってみたけど、肝心の色目が全く気に入りませんでした。わたしは木目などの木の質感が大好きだから、やっぱりキシラデコールのような浸透性塗料が好きなんだなぁ、と再認識。
こんな場所で実験しました
少しでも耐腐食性を高める為に塗装した杉材。実験の為にこんな場所で使用してみました。
残資材である真砂土を保管するスペースの、土留(どどめ)部分です。
土留とは土が崩れてこないように堰き止める為の構造物。その性質上、当然絶えず土と接することになります。24時間365日、本当に絶えることなく接し続けます。
雨が降ったら雨水は土に染み込みますし、土の内部なんて通気性は皆無。土の内部に染み込んだ雨水はそう簡単には乾きません。木材にとって水分は腐朽の大きな要素ですから、そんな土と接する土留は木材にとって無茶苦茶過酷な環境と言えるでしょう。
杉を土留として使用した結果
テスト開始から2年近く経過した頃、過酷な環境に放り込まれた杉材がどうなったのか確認しました。
結果はご覧の通り・・・バリバリ腐食しまくっています。辛うじて原形は保っているものの、腐食している部分を触るとボロボロ崩れていってしまう感じ。
腐食が激しいのは土と直接接していた部分で、接していなかった反対側の方の腐食具合は意外とかなりマシ。意外とマシっぽく見えてもその内部は反対側からボロボロにされているんだから全然ダメなんだけど、土と接している方と接していない方の傷み方が違うことからも、”土と接しているかどうか”ということで木材に与えるダメージがどれだけ違うかが分かります。
それにしても見事な腐食っぷり。土と接するということは木材にとって本当に致命的なのですね。手で軽く触る毎にボロボロと崩れていってしまうので、もはや強度は皆無・・・。
キノコまで生えてきちゃっています。いかに湿度が多く、過酷な環境だったかが分かりますね。
例②:畑に木材を放置するとこうなる
ご近所さんの畑仕事のお手伝い時に発見したのが、数年間にわたり畑に放置された木材。
住宅用資材の余りなどを畑に放置するのはわたしの周囲では結構あるあるなんです。もちろん目的があって、農業用マルチや農機具に被せるブルーシートなどが風に飛んでいかないようにするための重しに使うことが多いみたい。
10年以上放置されていたようですが、それはまぁ見事に腐朽しています。腐朽され過ぎて、もはや木材というよりかは土ですよ。間違いなく土に還る寸前状態。畑の土と木材を接触させると、木材はやがてはこうなるという実例ですね。
例③:樹木の支柱
土と木材が接触していると木材が簡単に腐朽することを手軽に実感できるのが、こういった樹木の支柱(杭)。
こういった支柱は樹木がまだ小さい時期に倒れないように設置するための一時的なもの。しかしながら、その後ちゃんと支柱を撤去する人って少ないんじゃないでしょうか?
この支柱をうっかり放置してしまうと・・・
土の腐朽パワーであっけなく腐敗しちゃいます。ホームセンターで手軽に入手できる支柱は多くの場合杉なもんだから、やっぱり全然持ちません。わたしが使った製品は耐久性を高める為に表面を焼いて炭素層を形成させているタイプだったんですが、そういう処理でどうにかなる問題ではないみたい。
レイズドベッドを腐朽させず長持ちさせる方法
土と木材を接触させない
木材はどれだけ気を使っても決して永遠にもつ材料ではないけど、それでも土と直接接触させなければ何十年ももたすことはできるはず。
なので、最も重要な対策はとにかく土と木材を接触させないこと。わたしが製作したレイズドベッドでは木材のフレームと内部の土との間に農業用水路で使用する樹脂製の波板を仕込んでいます。この対策はなかなか効果があるようで、現在8年目。木材にサイプレスを使っていることもあると思うんだけど、とくに目立った痛みはまだありません。
同様の対策はプロが施工したと思われるレイズドベッドでも見られました。でもこちらはわたしが使っているペラペラの波板よりも、ずっと頑丈そうな材料を使っています。これならより一層長く使えそうですね。
木材ではなくレンガで作る
木材の質感や雰囲気が好きな人には適さないけど、そもそも木材ではなくレンガなどの無機系材料で製作したら絶対腐朽しません。ハードウッドでレイズドベッドを製作すると結構な金額になるので、レンガで製作してもあんまり費用は変わらないんじゃないかと思っています。作るのは大変だけど、一生使えるレイズドベッドが欲しいならレンガなどの無機系材料もいいかも。
レイズドベッドはDIY上級者向け?素材の選定は慎重に
というわけで今回はレイズドベッドの材料について、木材の腐朽リスクを中心に考えてみました。
水分をたっぷり含む菜園スペースの土は、そのままだと木材の腐朽を確実に早めてしまいます。腐朽した木材はシロアリ発生のリスクもありますから、住宅にも致命的な被害をもたらしかねない重要なこと。レイズドベッドの質感や雰囲気はわたしも大好きですが、木材でレイズドベッドを製作するときは必ず使用する材料の選定や、極力木材と土の接触を低減させるような工夫をおこなうようにしましょう。